最終更新日:2026年10月4日
生命保険料控除は、支払った保険料そのものが戻る制度ではありません。一定の計算で求めた「所得控除額」を所得から差し引き、所得税と住民税の計算対象を減らす制度です。2026年分は、23歳未満の扶養親族がいる人に対する所得税の特例が加わりました。
今回の確認範囲:2026年10月4日に、所得税の新・旧契約の計算式、2026年・2027年の子育て世帯特例、合計上限、対象契約、証明書、年末調整・確定申告、住民税の計算を国税庁・財務省・自治体の公式情報で確認しました。
注意:控除額と実際の減税額は同じではありません。個別の税額は、課税所得、他の控除、住民税の自治体計算などで変わります。
先に結論
- 所得税は、一般生命・介護医療・個人年金の3区分を計算する
- 通常の新契約は各区分最高4万円、3区分合計最高12万円
- 2026年・2027年分は、23歳未満の扶養親族がいる場合、新契約の一般生命分が最高6万円
- 特例を使っても、所得税の3区分合計上限は12万円
- 住民税は新契約各区分最高2万8,000円、合計最高7万円
- 申告するのは、原則として実際に保険料を負担した人
2026年分の生命保険料控除で変わった点
2026年分と2027年分の所得税では、年齢23歳未満の扶養親族を有する人について、新契約の一般生命保険料控除の計算式と上限が拡充されます。通常は最高4万円ですが、特例の対象者は最高6万円です。
対象となるのは新生命保険料に係る一般生命保険料控除です。介護医療保険料控除と個人年金保険料控除の上限が6万円になる制度ではありません。また、3区分を合計した所得税の生命保険料控除額が12万円を超える場合、控除額は12万円です。
23歳未満の扶養親族がいる場合の新しい計算式
| 年間の新生命保険料 | 一般生命保険料控除額 |
|---|---|
| 3万円以下 | 支払保険料の全額 |
| 3万円超~6万円以下 | 支払保険料×1/2+1万5,000円 |
| 6万円超~12万円以下 | 支払保険料×1/4+3万円 |
| 12万円超 | 一律6万円 |
たとえば、対象者が新契約の一般生命保険料を年間7万2,000円支払った場合は、7万2,000円×1/4+3万円=4万8,000円です。旧記事の通常計算では3万8,000円でしたが、2026年分の特例対象者は計算式が異なります。
扶養親族の判定は申告書の案内を確認する
「23歳未満」だけで自動的に適用されるわけではなく、扶養親族の所得要件などがあります。国税庁は令和8年分の保険料控除申告書と年末調整Q&Aを公開しています。年末近くに子が生まれた場合など、年末調整後に要件を満たしたときは、勤務先が源泉徴収票を作成するまでに申し出て再計算してもらう方法や、確定申告で還付を受ける方法があります。
所得税の控除額を計算する
2012年1月1日以後の新契約:通常の計算式
子育て世帯特例を使わない新生命保険料、介護医療保険料、新個人年金保険料は、区分ごとに次の表で計算します。
| 年間の支払保険料等 | 所得税の控除額 |
|---|---|
| 2万円以下 | 支払保険料等の全額 |
| 2万円超~4万円以下 | 支払保険料等×1/2+1万円 |
| 4万円超~8万円以下 | 支払保険料等×1/4+2万円 |
| 8万円超 | 一律4万円 |
「支払保険料等」は、その年に支払った金額から、その年に受けた剰余金や割戻金を差し引いた金額です。保険会社の控除証明書に記載された新・旧区分と申告額を確認します。
2011年12月31日以前の旧契約
旧生命保険料と旧個人年金保険料は、区分ごとに次の表で計算します。旧契約には介護医療という独立区分はなく、旧制度の医療保険・介護保険等は旧生命保険料に含まれる場合があります。
| 年間の支払保険料等 | 所得税の控除額 |
|---|---|
| 2万5,000円以下 | 支払保険料等の全額 |
| 2万5,000円超~5万円以下 | 支払保険料等×1/2+1万2,500円 |
| 5万円超~10万円以下 | 支払保険料等×1/4+2万5,000円 |
| 10万円超 | 一律5万円 |
新契約と旧契約の両方がある場合
一般生命保険料と個人年金保険料で新旧両方を支払っている場合は、新契約と旧契約をそれぞれ計算したうえで、国税庁の区分別上限に従います。旧契約だけで計算したほうが控除額が大きくなる場合があります。証明書を1枚だけ選ぶのではなく、まず新旧の記載を分けて申告書の計算欄へ転記してください。
2026年分の子育て世帯特例では、新生命保険料と旧生命保険料を併用する場合にも特別な上限判定があります。申告書の計算欄または国税庁の確定申告書等作成コーナーを使うと、手計算による取り違えを防げます。
計算例:通常の新契約を3区分で支払った場合
新契約の一般生命保険料が年間7万2,000円、介護医療保険料が4万8,000円、新個人年金保険料が10万円だったとします。子育て世帯特例を使わない場合、一般生命は7万2,000円×1/4+2万円=3万8,000円、介護医療は4万8,000円×1/4+2万円=3万2,000円、個人年金は8万円超なので4万円です。合計控除額は11万円になります。
これは支払保険料22万円が11万円戻るという意味ではありません。所得税の課税所得から11万円を差し引く計算です。住民税は同じ保険料でも別表で再計算するため、所得税の控除額をそのまま住民税へ使いません。
計算例:2026年の子育て世帯特例で各区分が上限の場合
23歳未満の扶養親族がいる特例対象者が、新契約の一般生命保険料12万円超、介護医療保険料8万円超、新個人年金保険料8万円超を支払うと、区分別の計算は6万円、4万円、4万円です。合計すると14万円ですが、所得税の生命保険料控除には合計12万円の上限があるため、最終控除額は12万円です。
この例でも、控除上限に届かせるために不要な保険を追加する合理性はありません。追加保険料の全額が税負担減になるわけではなく、解約時の不利益や家計の固定費増加もあるためです。
住民税の生命保険料控除
住民税は所得税と計算式・上限が異なります。新契約の一般生命、介護医療、個人年金は、区分ごとに次の表で計算します。
| 年間の支払保険料等 | 住民税の控除額 |
|---|---|
| 1万2,000円以下 | 支払保険料等の全額 |
| 1万2,000円超~3万2,000円以下 | 支払保険料等×1/2+6,000円 |
| 3万2,000円超~5万6,000円以下 | 支払保険料等×1/4+1万4,000円 |
| 5万6,000円超 | 一律2万8,000円 |
3区分の単純合計は最大8万4,000円になりますが、住民税の生命保険料控除の合計上限は7万円です。旧契約は別の計算式と各区分3万5,000円の上限があり、新旧を併用する場合も区分別の上限判定があります。最終的な計算は居住する自治体の案内で確認してください。
控除額と減税額を混同しない
所得控除が12万円でも、税金が12万円戻るわけではありません。概算の税負担減は「所得控除額×その人に適用される税率」を基に考えます。ただし所得税は累進税率で、復興特別所得税もあり、住民税には自治体の計算があります。
年収だけでは課税所得や適用税率を確定できません。給与所得控除、基礎控除、配偶者・扶養控除、社会保険料控除、住宅ローン控除などが人によって違うためです。旧記事にあった「年収500万円なら約3万円」のような固定試算は削除しました。
誰が申告でき、どの契約が対象になるか
原則は実際に保険料を支払った人
契約者名だけで申告者を決めるのではなく、誰が保険料を負担したかを確認します。たとえば妻が契約者でも、夫が保険料を支払い、保険金受取人の要件を満たす場合は、夫の生命保険料控除の対象になり得ます。
一般生命・介護医療では、保険金等の受取人のすべてが、保険料を支払う人本人・配偶者・その他の親族であることが要件です。個人年金保険料控除には、受取人や保険料払込期間など別の要件があります。控除証明書の区分を自己判断で変更しないでください。
保険ならすべて対象になるわけではない
保険期間が5年未満の生命保険など、控除対象にならない契約があります。個人年金保険でも、税制適格特約が付いていないなどの理由で一般生命保険料の区分になる場合があります。医療・がん・介護の名称だけで区分を判断せず、控除証明書に印字された区分を使います。
控除のためだけに保険を増やさない
控除は保険料全額が戻る制度ではありません。保障内容と家計負担を先に確認してください。
※広告リンクです。対応方法、相談範囲、利用条件は公式ページで確認してください。
年末調整と確定申告の手順
控除証明書で確認する項目
控除証明書では、保険会社名、契約者、保険種類、保険期間、保険金等の受取人、新制度・旧制度の区分、証明額、年末まで支払った場合の申告額を確認します。証明日時点の支払額と、年末までの予定を含む申告額が併記されている場合があるため、申告書の案内に従って転記します。
年の途中で解約、減額、払込停止などがあった場合は、予定額どおりにならないことがあります。再発行された証明書や保険会社からの訂正案内があれば、古い証明書と混在させず、どの金額を申告するか保険会社へ確認してください。
1つの契約に死亡保障、医療保障など複数の保障が含まれる場合、保険料が区分ごとに記載されることがあります。契約全体の保険料を任意の区分へまとめず、証明書の一般生命・介護医療・個人年金の各欄をそのまま使います。
会社員が年末調整で申告する場合
- 保険会社の生命保険料控除証明書を集める
- 一般生命・介護医療・個人年金、新・旧の区分を確認する
- 給与所得者の保険料控除申告書へ証明書どおりに転記する
- 勤務先の期限までに証明書と申告書を提出する
- 源泉徴収票の生命保険料控除額を確認する
書面のほか、勤務先の年末調整システムへ電子データで提出できる場合があります。対応方法は会社と保険会社で異なります。旧契約で年間保険料が9,000円以下の場合など証明書の添付・提示に例外がありますが、証明書は申告内容の確認に使うため保管してください。
確定申告で申告する場合
- 控除証明書と源泉徴収票等を準備する
- 確定申告書等作成コーナーで生命保険料控除を選ぶ
- 証明書の区分と支払額を入力するか、対応する電子データを読み込む
- 計算された控除額と源泉徴収票から転記した額の重複がないか確認する
- 申告書を送信または提出し、証明書を必要期間保管する
「e-Taxなら証明書は常に不要」とは限りません。電子的控除証明書を確定申告書等作成コーナーへ読み込める場合、オンライン送信ができます。手入力時の添付省略や保存の扱いは、その年分のe-Tax案内に従ってください。
年末調整で申告し忘れた場合
年末調整に間に合わなくても、確定申告または還付申告で生命保険料控除を申告できます。確定申告義務のない給与所得者などの還付申告は、その年の翌年1月1日から5年間提出できます。ただし、源泉徴収税額や予定納税額がゼロなら、所得控除を追加しても所得税の還付が生じない場合があります。
すでに確定申告書や還付申告書を提出し、控除を入れ忘れた場合は「更正の請求」を検討します。期間は原則として法定申告期限から5年以内ですが、申告状況で起算点等の確認が必要です。「申告漏れはすべて更正の請求」と一括せず、未申告か提出済みかを分けて税務署へ確認してください。
還付申告をする際は、対象年分の控除証明書、源泉徴収票、本人確認情報、還付金の受取口座を準備します。住民税への反映時期は申告時期や自治体の処理で異なるため、所得税の還付だけで手続き完了と判断せず、必要に応じて自治体の税務担当窓口へ確認してください。
計算前チェックリスト
- 控除証明書の契約者名だけでなく、実際の保険料負担者を確認する
- 一般生命・介護医療・個人年金の区分を証明書で確認する
- 2012年以後の新契約と2011年以前の旧契約を分ける
- 剰余金・割戻金を反映した証明書の申告額を使う
- 2026年分は23歳未満の扶養親族に関する特例対象か確認する
- 所得税の区分別上限と合計12万円上限を確認する
- 住民税は別の計算式と合計7万円上限で確認する
- 控除額を「返ってくる税額」として扱わない
- 提出後は源泉徴収票または申告書控えで反映を確認する
よくある質問
Q. 2026年は全員の上限が6万円になりますか?
A. いいえ。23歳未満の扶養親族がいる人の新契約に係る一般生命保険料控除が対象です。介護医療・個人年金の上限は変わりません。
Q. 特例を使えば所得税の合計上限は14万円ですか?
A. いいえ。一般生命6万円、介護医療4万円、個人年金4万円と計算できても、生命保険料控除の合計上限は12万円です。
Q. 医療保険はどの区分ですか?
A. 新契約の対象となる医療・介護保険は通常、介護医療保険料の区分です。旧契約や契約内容で異なるため、控除証明書の表示を使ってください。
Q. 契約者と支払者が違う場合は誰が申告しますか?
A. 原則として実際に保険料を負担した人が申告します。保険金受取人等の要件もあるため、支払記録と契約内容を確認してください。
Q. 控除上限まで保険に入ると得ですか?
A. 控除額は支払保険料より小さく、保険料全額が戻る制度ではありません。税控除より、必要な保障と保険料負担を優先してください。
Q. 年末調整で忘れたら控除を受けられませんか?
A. 確定申告または還付申告で申告できます。すでに申告済みなら更正の請求を検討し、期間と必要書類を税務署へ確認してください。
出典・参考資料
- 国税庁 No.1140:生命保険料控除
- 国税庁:生命保険料控除Q&A
- 国税庁:令和8年分 年末調整のしかた
- 国税庁:令和8年分 年末調整Q&A
- 国税庁 No.2030:還付申告
- 国税庁 No.2026:確定申告を間違えたとき
- 財務省:令和8年度税制改正の大綱
- 和歌山県:個人県民税 生命保険料控除
- 生命保険文化センター:税金の負担が軽くなる生命保険料控除
- 生命保険文化センター:新旧両制度がある場合
- 生命保険文化センター:申告を忘れた場合
- 生命保険文化センター:実際の保険料負担者
- 生命保険文化センター:所得税の計算と所得控除
- 生命保険協会:生命保険料控除制度
免責事項:本記事は一般的な税制度の情報提供を目的としており、個別の税務・保険判断に関する助言ではありません。契約内容、保険料負担者、受取人、扶養親族、所得、申告状況により扱いは異なります。国税庁、自治体、勤務先、税務署または税理士へ最新情報をご確認ください。
執筆・監修:保険比較ナビ編集部
本記事は、金融庁・国税庁・各社公式サイト等の一次情報をもとに、保険比較ナビ編集部が中立的な立場で作成しています。特定の金融商品を推奨するものではありません。

