最終更新日:2026年10月6日
高額療養費制度は、1か月の保険診療の自己負担が年齢・所得に応じた上限を超えた場合、超過分を支給する制度です。2026年8月診療分から月額上限が改定され、8月から翌年7月までの年間上限も導入されました。
今回の確認範囲:2026年10月6日に、厚生労働省と協会けんぽの公式情報を基に、2026年8月~2027年7月の上限額、年間上限、多数回該当、世帯合算、窓口負担、対象外費用を確認しました。
広告・PR:この記事にはアフィリエイト広告を含みます。掲載内容は広告報酬だけで決めていません。2027年8月にも所得区分の細分化が予定されているため、受診月時点の加入先資料で再確認してください。
先に押さえる5点
- 上限は1日・1入院ではなく原則1日から末日までの暦月単位
- 70歳未満は標準報酬月額・旧ただし書所得で区分を確認
- 食事、差額ベッド、先進医療技術料等は対象外
- マイナ保険証または認定証で窓口負担を上限までにできる場合がある
- 2026年8月から年間上限、2027年8月に所得区分細分化を予定
2026年8月から月額上限と年間上限が変わった
厚生労働省は、2026年8月診療分から、低所得者へ配慮しながら月単位の自己負担上限を見直し、新たに年間上限を導入しました。年間は8月から翌年7月までです。月ごとの負担が積み上がり年間上限へ達した後は、超過分が保険者から還付される仕組みです。
2026年8月~2027年7月の70歳未満の主な区分は次のとおりです。年収は目安で、会社員等は標準報酬月額、国民健康保険は旧ただし書所得で判定します。
| 年収目安 | 月額上限 | 多数回 | 年間上限 |
|---|---|---|---|
| 約1,160万円以上 | 270,300円+(医療費-901,000円)×1% | 140,100円 | 168万円 |
| 約770万~約1,160万円 | 179,100円+(医療費-597,000円)×1% | 93,000円 | 111万円 |
| 約370万~約770万円 | 85,800円+(医療費-286,000円)×1% | 44,400円 | 53万円 |
| 約370万円以下 | 61,500円 | 44,400円 | 53万円 |
| 住民税非課税 | 36,900円 | 24,600円 | 29万円 |
この表は70歳未満の概要です。70歳以上は外来の個人上限と世帯上限があり、所得区分も異なります。年収約200万円未満の課税世帯には年間上限41万円を後日適用する経過的な取扱いがあるため、該当可能性があれば加入先へ確認してください。
2027年8月から再び変わる予定
2027年8月からは所得区分がさらに細分化されます。たとえば、2026年8月時点で同じ約370万~約770万円区分でも、2027年8月以後は約370万~約510万円、約510万~約650万円、約650万~約770万円に分かれる予定です。この記事の表を将来の受診へ固定して使わないでください。
月額上限は総医療費を使って計算する
計算式の「医療費」は、窓口で払った3割分ではなく、保険診療の総医療費10割です。70歳未満・年収約370万~約770万円の人が、同じ月に総医療費100万円の治療を受けた場合、2026年8月以後の月額上限は次の計算です。
85,800円+(1,000,000円-286,000円)×1%=92,940円
3割負担なら窓口負担は30万円ですが、高額療養費の対象となる自己負担は約92,940円まで抑えられる計算です。厚生労働省も同じ所得帯の一例を約9.3万円と案内しています。
実際の支給額は、受診者、医療機関、医科・歯科、入院・外来、薬局、世帯合算、端数処理等で変わります。医療費100万円だから全員92,940円ではありません。所得区分と領収書を加入先へ確認します。
月をまたぐ入院は別々に計算
高額療養費は暦月単位です。たとえば20日間の入院でも、すべて同じ月なら1か月分、月末から翌月へまたげば2か月分として計算します。入院日数が同じでも自己負担が同じとは限りません。
治療日程を給付目的で変更するのではなく、医師の判断を優先します。予定入院なら、医事課に概算、月またぎ、食事・差額ベッド等の保険外費用を確認し、資金計画を作ります。
多数回該当・年間上限・世帯合算は別の仕組み
多数回該当
直近12か月に高額療養費へ3回以上該当した場合、4回目から月額上限が下がる仕組みです。2026年8月見直しでも多数回該当額は原則据え置かれました。年収約370万~約770万円区分では44,400円です。
転職や加入先変更、被保険者・被扶養者の変更により、過去の該当回数を引き継げない場合があります。「過去12か月に3回使ったから必ず次は44,400円」と判断せず、現在の保険者へ確認します。
年間上限
2026年8月からの年間上限は、多数回該当に届かない長期療養者も含め、8月から翌年7月までの自己負担累計を抑える仕組みです。月額上限の12倍ではありません。年収約370万~約770万円区分は53万円です。
月ごとの支払いが自動的にその場で止まるとは限らず、保険者からの還付手続き・案内が必要な場合があります。資格変更や複数保険者をまたぐ場合の扱いを確認し、各月の領収書と支給決定通知を保存します。
世帯合算
同じ医療保険へ加入する家族の自己負担や、1人が複数の医療機関を受診した自己負担を、条件を満たせば世帯単位で合算できます。70歳未満では、原則として1件21,000円以上の自己負担が合算対象です。
住民票上の同一世帯でも、健康保険の加入先が異なると合算できない場合があります。協会けんぽと国民健康保険、別々の健康保険組合などは保険者が異なります。
窓口での支払いを上限までにする方法
オンライン資格確認に対応する医療機関では、マイナ保険証を提示し、限度額情報の提供に同意すると、保険診療分の窓口支払いを月額上限までにできる場合があります。事前の認定証申請を省けることがあります。
マイナ保険証を利用できない医療機関、オンライン資格確認で所得区分を確認できない場合、住民税非課税区分等では、限度額適用認定証または限度額適用・標準負担額減額認定証が必要になることがあります。加入先へ確認してください。
認定証等を使わず窓口で上限を超えて支払った場合も、要件を満たせば後から高額療養費を申請できます。協会けんぽは、診療報酬明細書の確認が必要なため、支給まで診療月から3か月以上かかると案内しています。
一時的な立替資金が足りない場合
加入先によっては、高額医療費貸付制度、受領委任払い、独自の付加給付等がある場合があります。医療機関の相談窓口、健康保険組合、市区町村へ早めに相談します。クレジットカードのリボ払いや高金利の借入を先に選ばないでください。
高額療養費の対象外となる費用
高額療養費の対象は、保険適用される診療の自己負担です。協会けんぽは、保険外診療、入院時食事負担、差額ベッド代等を対象外と案内しています。
| 対象外の例 | 確認点 |
|---|---|
| 入院時の食事負担 | 所得・長期入院等による軽減区分 |
| 差額ベッド代 | 希望・同意、病院ごとの料金 |
| 先進医療の技術料 | 技術・実施医療機関ごとの費用 |
| 自由診療・保険外併用の差額 | 保険診療部分だけが対象になる場合 |
| 交通・日用品・文書料 | 病衣、洗濯、家族交通、診断書等 |
| 収入減少 | 傷病手当金、休職制度、貯蓄等 |
食事負担は制度改正や所得区分で変わります。従来の定額表記を固定して将来費用を計算しないでください。差額ベッド代も全国一律の金額ではなく、病院・病室で異なります。
高額療養費があっても医療保険の要否は家計ごとに違う
高額療養費があるから医療保険は全員不要、または対象外費用があるから全員必要、とは判断できません。公的制度適用後の不足額と、保険料を継続して払う負担を比較します。
不足額 = 保険診療の月額負担+対象外費用+収入減少-傷病手当金等-勤務先給付-医療に使える貯蓄-既契約給付
貯蓄300万円という総額だけでは判断できません。生活防衛資金、住宅費、教育費、他の債務を残したうえで、医療へ使える額を分けます。会社員でも傷病手当金の条件、待期、給与・有給との調整、支給期間を確認します。
自営業者等は会社員等と同じ傷病手当金を全国一律の前提にできませんが、だから一律に医療保険が必要とも限りません。貯蓄、家族収入、共済、所得補償、事業固定費を確認します。
家計の不足額を試算する3つの例
例1:保険診療だけで月内に治療が終わる場合。70歳未満で年収約370万~約770万円の区分、総医療費100万円なら、月額上限は92,940円です。窓口で3割の30万円を支払い、後日払い戻しを受ける場合は、差額207,060円を一時的に立て替えます。マイナ保険証等で限度額情報を確認できれば、この立替を抑えられることがあります。家計の試算では最終負担だけでなく、払い戻しまでの資金も分けて記録します。
例2:入院が月をまたぐ場合。同じ治療でも、月末に入院して翌月に退院すると、保険診療費は二つの暦月に分かれます。各月の自己負担がそれぞれ上限未満なら、高額療養費が生じないこともあります。予定入院では治療上の都合を最優先にしながら、病院へ概算額と請求月を確認します。入院日を費用だけで自己判断して変更せず、医師・病院と相談してください。
例3:対象外費用と休業が重なる場合。保険診療の負担が上限内でも、食事負担、本人が希望した個室の差額、交通費、日用品、家族の付き添い費用、休業による手取り減少は別に発生します。民間医療保険を検討する場合は、入院日額だけでなく、給付条件、支払限度日数、手術の定義、免責、更新後保険料を確認します。既契約は解約前に保障内容と再加入条件を確認します。
比較表は「制度で戻る額」と「戻らない額」を分ける
領収書の合計だけを民間保険の必要保障額にしないでください。まず保険診療の総医療費、窓口負担、高額療養費の見込額を記録します。次に食事・差額ベッド・交通などの対象外費用、最後に休業による手取り減少を加えます。そこから傷病手当金、健康保険組合の付加給付、勤務先見舞金、既契約の給付、医療に使える貯蓄を差し引きます。
高額療養費の所得区分は、単純な年収だけで確定しない場合があります。会社員等では標準報酬月額、国民健康保険では所得区分など、加入制度の判定方法を使います。家族の収入をまとめた世帯年収だけで表を選ばず、保険者へ確認してください。転職、退職、扶養変更、住民税非課税区分の変更があった年は、資格と区分の切替時期も確認します。
また、勤務先の健康保険組合には法定給付に上乗せする付加給付がある場合があります。付加給付は組合ごとに条件が異なり、退職や保険者変更後は同じ内容を使えないことがあります。現在の制度を確認せず、過去の給付額を将来も続く前提にしないことが大切です。
申請漏れを防ぐには、診療月ごとに「本人・家族」「医療機関」「入院・外来」「調剤薬局」「保険診療の自己負担」を一覧にします。70歳未満の世帯合算では、原則として一つの医療機関等で月21,000円以上の自己負担を合算対象として確認します。医科と歯科、入院と外来を別に扱う場合があるため、領収書を一つの総額にまとめるだけでは判定できません。多数回該当も、過去12か月に上限へ達した月が何回あるかを保険者へ確認します。転職などで保険者が変わると通算できない場合があります。申請書の提出前に、合算対象と回数の数え方を現在の保険者へ照会してください。
公的保障適用後の不足額を確認
高額療養費、傷病手当金、勤務先給付、貯蓄、既契約を同じ表にしてから判断してください。
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入院・高額治療の前後で確認する手順
治療前・予定入院前
- マイナポータル・資格確認書で加入先保険者を確認
- 受診月の所得区分と月額上限を確認
- マイナ保険証または認定証の利用可否を医療機関へ確認
- 保険診療と保険外費用の概算を分けて取得
- 月またぎ、複数医療機関、薬局の予定を整理
- 勤務先給付・民間保険の請求書類を確認
支払い後
- 領収書・診療明細書を月別、受診者別、医療機関別に保存
- 窓口負担が月額上限を超えていないか確認
- 世帯合算・多数回該当の対象を確認
- 8月~翌7月の累計を記録し年間上限を確認
- 保険者の申請期限・必要書類を確認
- 医療費控除では高額療養費等の補填額を区分して申告
高額療養費と医療費控除は別制度です。高額療養費で補填される金額は、医療費控除の計算で支払医療費から差し引きます。個別の税務は国税庁・税務署へ確認してください。
よくある質問
Q. 2026年8月から標準的な所得の上限はいくらですか?
A. 70歳未満・年収約370万~約770万円の区分では、85,800円+(総医療費-286,000円)×1%です。標準報酬月額等で区分を確認します。
Q. 年間上限の1年は1月から12月ですか?
A. いいえ。2026年8月導入の年間上限は、8月から翌年7月までを一つの期間とします。
Q. 月をまたいだ入院は合算できますか?
A. 高額療養費は原則として暦月ごとに計算するため、月をまたぐ部分は別々の月として上限を判定します。
Q. 差額ベッド代や食事代も上限に含まれますか?
A. 含まれません。高額療養費は保険診療の自己負担が対象で、食事負担や差額ベッド代等は対象外です。
Q. 払い戻しはいつですか?
A. 協会けんぽでは診療月から3か月以上かかると案内しています。保険者で異なるため、申請状況を加入先へ確認してください。
Q. 高額療養費があれば医療保険は不要ですか?
A. 一律には決まりません。対象外費用、収入減少、公的・勤務先給付、貯蓄、既契約を差し引いた不足額で判断します。
出典・参考資料
- 厚生労働省:高額療養費制度
- 厚生労働省:2026年8月からの見直し
- 厚生労働省:医療保険制度改正法
- 協会けんぽ:高額療養費
- 協会けんぽ:簡易試算
- 協会けんぽ:限度額適用認定証等
- 協会けんぽ:払い戻しと対象外費用
- 生命保険文化センター:入院費用
免責事項:本記事は一般的な情報提供を目的としています。上限額、所得区分、申請方法、付加給付は受診月・加入先で異なります。資格情報と最新制度を保険者へご確認ください。
執筆・監修:保険比較ナビ編集部
本記事は、金融庁・国税庁・各社公式サイト等の一次情報をもとに、保険比較ナビ編集部が中立的な立場で作成しています。特定の金融商品を推奨するものではありません。

